ティタノマキアが終わると、ゼウスたちはオリンポスの山に住むことになりました。 しかし、それまでの神様をどかしたので、新たにどこを誰が治めるか決めなければなりません。 ゼウス、ハデス、ポセイドンは、何とくじ引きをして支配地を決めます。 その結果、ゼウスは天空を、ポセイドンは海を、ハデスは地下の冥界を司ることになりました。 姉妹のヘスティアは炉の火を司る女神、デメテルは豊穣、 そしてヘラはゼウスの正妻となり、結婚と母性、貞節を司る女神となりました。

その他、神様の大編制が行われ、ゼウスによって、神々に神聖が与えられました。 つまり、ギリシアの神様たちは、ゼウスに認められて神様としての役目を果たしているのです。 そんな訳で、ゼウスはギリシア神話の主神なのです。

また、ゼウスは神々の裁判官であり、刑執行人という役割も持っています。 ゼウスに罰せられた神様の中には、アトラスやプロメテウスがいました。 彼らがどんな目に合ったのか、ゼウスの恐ろしい一面が見えてきます・・・。



まずは、アトラスのお話から。
アトラス像


アトラスはティタノマキアで活躍したティタン神族の一人でした。 アトラスは巨人で、ものすごい怪力の持ち主でしたから、 きっと、あまりにも目覚しい活躍をして、ゼウスたちの恨みをかったのでしょう。

アトラスだけは、タルタロスに閉じ込められた他のティタンとは、違った刑が与えられました。 それが、永遠に天空を担ぐというもの。 アトラスは、世界の西の果てで天空を担いで、 大地と天がぶつからないようにしているのです。

アトラスはあまりの重さに、両手と肩と、頭まで使って、ようやく天を支えています。 アトラスは一度、ヘラクレスの難業に出てきました。 その時、一度だけ天空を肩から下ろし、ヘラクレスに担いでもらうのですが、 そのまま逃げようと思ったら、ヘラクレスにまんまと騙されて、また天空を担ぐ羽目になりました。

その後、アトラスは自分の代わりに天空を担げるほどの力持ちに出会えず、 世界を旅していたペルセウスに出会います。 そして、ペルセウスがメデューサを退治した後、 その首を見せてもらい、石になったという説もあります。 それが、今のアフリカ北西部にあるアトラス山脈なのだそうです。

また「アトラス」という言葉は、世界地図を表す言葉にも使われています。



さて、もう一人、プロメテウスのお話です。

プロメテウスは、アトラスの弟でもありますが、 アトラスとは全く違った罪で、ゼウスに重い罰を与えられてしまいます。 プロメテウスの罪とは、人間に「火」を教えたことです。

プロメテウスは下界を見下ろした時、人間たちがほとんど裸のままで洞窟に住み、 寒そうにしているのに気づきました。 もっと良く見てみると、人間は肉を生で食べ、石で作った道具を使い、 言葉もうまく使えていません。
Peter Paul Rubens
『Gefesselter Prometheus』
(1612年)

せっかく神々に似せて作られたというのに、これでは人間が哀れだと思ったプロメテウスは、 ゼウスに直訴しに出かけます。 ところがゼウスは、人間は今の状態でいるほうが幸せなのだ、と取り合いません。 プロメテウスは納得できず、ある朝、こっそり日の出の火を盗んで、 人間に火を与え、使い方を教えてしまいました。

火を得た人間は、洞窟から外に出て、食べ物を調理して食べ、夜道を松明で照らすようになります。 それどころか、あっという間に街や城を作り、鍛冶屋が現れて、 鉄の武器や鎧兜を作り、船を作って遠い国へ出かけ、神々と同じように戦争を始めたのです。

ゼウスはこれに気づくと、烈火のごとく怒って、プロメテウスを捕らえます。 ゼウスは、人間が神々を滅ぼすほどの“誇り”を持っていることを知っていました。 その人間に「火」を与えれば、神々と同様の存在になろうとするだろうし、 いずれオリンポスを荒らしに来るだろうと予想していたからです。

ゼウスはプロメテウスを、カウカソス山の頂に縛りつけ、 エトンという2羽の巨大な鷲に、プロメテウスの肝臓をついばませる、という刑を与えます。 プロメテウスは不死の神ですから、腹を割かれ、肝臓をついばまれても、 次の日には肝臓は元通りになり、またエトンに腹を割かれることになります。 つまり、未来永劫苦しみが続くのです。

プロメテウスは、のちにヘラクレスに救われたという話もありますが、 人間に「火」を教えるというのは、それほどまでに重い罪だったのですね。




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