アフロディテの恋の相手として、最も有名なのは軍神アレスです。 アレスはゼウスとヘラの息子、あるいはヘラが一人で産んだという説もある神様で、大変な美男子でしたが、 乱暴な性格のために、他の神様からも恐れられ、厄介者扱いをされています。 軍神というと、最も信仰されたのはアテナですが、アテナが正義のための戦いや戦略、知恵を司るのに対し、 アレスは戦いの狂気を司る神さまです。 そのため、短気で乱暴者なアレスと正義を愛するアテナとは、仲が悪いと言われています。

そんなアレスとアフロディテは、恋に落ちました。 アフロディテには、美男子で短気なアレスが魅力的に見えたかもしれません。 しかし、アフロディテがアレスに出会ったのは、ヘパイストスと結婚した後でした。

結婚しているといっても、愛の女神アフロディテは醜いヘパイストスを嫌っていたようです。 オリンポスでも二人が不仲だという話は有名でした。 そこへ現れたアレスとアフロディテはすぐに浮気を開始・・・。 キューピッドとも呼ばれるエロスの父親も、この浮気相手アレスだという説もありますが、 二人の間には、5,6人子供ができています。 一方のヘパイストスとの間には、子供はいません。

アフロディテはヘパイストスが留守の間に、アレスを呼んで浮気をしていました。 その間、門の前にアレスの従者アレクトリュオンを見張りに立たせていました。 ところがある時、このアレクトリュオンが居眠りをしてしまい、 ちょうどそこへ太陽の神さまヘリオスが、天の見回り中に通りかかったのです。 ヘリオスはアフロディテとアレスが密会をしているところを目撃してしまいました! ヘリオスは、ヘパイストスに告げ口します。
Martin Van Heemskerk/ 『Mars and Venus caught in the net and shown by Vulcan to gods』(1536)

真面目で不器用なヘパイストスは、彼なりにアフロディテを愛していました。 アフロディテを信じて疑わなかったヘパイストスは、妻の裏切りを知って落胆し、 激しい怒りがこみ上げてきました。 そして、アフロディテへの恨みでいっぱいになったヘパイストスは、一計を案じました・・・。


いつものように、ヘパイストスが仕事に出かけると、アフロディテはアレスを呼びました。 何も知らない二人がベッドに入ると・・・ ヘパイストス特性の、見えない網が落ちてきて、 二人は裸で抱き合ったまま、網に捕らえられてしまったのです!  それどころか、もがけばもがくほど網が食い込んできて、身動きが取れません。

そこへ、ヘパイストスが、海の神さまポセイドン、神々の伝令者ヘルメス、 太陽の神さまヘリオス、ゼウスの妻ヘラ、戦いと芸術の女神アテナを率いて部屋に入ってきました。

ヘパイストスは、神々に「見てくれ。これが私のふしだらな妻だ。」 と言って、二人を笑いものにしました。 ヘパイストスが連れてきた神様には、ポセイドンは神々の裁定者、 ヘルメスは仲介者、ヘリオスは証人という役割がありました。 さらにヘラはヘパイストスとアレスの母であり、 アフロディテとの結婚の仲人でもあります。アテナはアレスと仲が悪いことで有名です。 こんな神様たちを味方につけたヘパイストスに対し、アフロディテとアレスには、言い訳する余地もありません。 ポセイドンとヘルメスが仲介して、ヘパイストスとアフロディテは離婚することが決まりました。

さらにポセイドンは、二人を網から出してやる条件として、ヘパイストスに賠償を払うことをアレスに約束させますが、 これは払われることはなかった、という説と、払ったという説の二つがあります。 一方のアフロディテも、謹慎させられました。が、こんなことして、謹慎だけ?という気もしないでもないような・・・。

これに懲りたのか、アフロディテはこれ以降、再婚していません。 とはいえ、アフロディテが恋愛をやめる、なんてことはありえません。 単に“愛人”関係で満足することにしたようです・・・。 時には、ゼウスにも美しい女性を紹介し、ゼウスの浮気を焚きつけたりしてます。 色んな意味で、すごい女性。。。 なぜなら、アフロディテは美の神であると同時に、 愛の神でもあるので、恋愛を振りまくのもお仕事なのです。


そうそう、このお話にはもう一つ後日談があります。 被害者は、見張り中に居眠りをしてしまったアレスの従者アレクトリュオンです。 アレクトリュオンが役に立たなかったことを怒ったアレスは、アレクトリュオンをニワトリに変えたそうです。 それ以来、ニワトリは朝が来ると「ヘリオスが来たぞ〜!!」と鳴くようになったのだとか・・・。




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