さて、ゼウスは洞窟に閉じ込められた上に、手足の腱を奪われ、全く身動きできません。 外では巨大な怪物テュポンが、大暴れに暴れています。 おまけに敗北を悟って逃げたはずのギガスの生き残りも戻ってきて、テュポンの大暴れに参加し始めました。


ゼウスが封印されてしまったことを、いち早く察知したのは、末息子でもあるヘルメスでした。 ヘルメスは、商業・旅人の神様でもありますが、泥棒の神様でもありましたね。 この神様が「泥棒の神様」である本領を発揮したのは、まさにこの時でした。 ヘルメスは、アイギパンというヤギと魚が混ざったような姿の神様と、ゼウスの救出に向かいます。 アイギパンはパン神(下半身がヤギで好色な羊と山羊の神様)と姿かたちも似ていますし、 名前も通称「パン」と呼ばれることが多いので、同一の位の低い神様だと思われがちですが、別人なのだそうです。 ヘラクレスも同行し、戻ってきて暴れていたギガスたちを退治しますが、テュポンを退治することまではできません。 テュポンは、ギガスたちと違って不死だったので、ヘラクレスにも殺せなかったのです。

ヘルメスは、ゼウスが閉じ込められている洞窟の場所を、スパイ活動で見つけ出し、 洞窟の見張りをしている竜の頭をまんまと騙して、ゼウスの手足の腱を盗み出しました。 そして、アイギパンと共にゼウスを洞窟から助け出し、手足の腱を元に戻して治療します。

ゼウスは完全復活★

自分が動けない間に好き放題していたテュポンに、猛攻撃を仕掛けます。 不意をつかれたテュポンは、稲妻に打たれ、傷つきながらアジアの方まで逃げていきました。



Thomas Colo/『Mount Aetna from Taormina』(1844年)
↑右奥の噴煙を上げる山がエトナ山です。↑
2002年にも噴火しました。

その途中でのできごとです。 テュポンは、モイライ(ゼウスの2番目の奥さんとの子で運命の三女神)に出会います。 モイライは、「勝利の実」という果物を持っていました。
これを食べれば、ゼウスに勝てる! と思ったテュポンは、モイライを脅して「勝利の実」を奪い取りました。 ところが、抜け目ないモイライたちが与えたのは、実は「無常の実」という、決して望みが叶わなくなる果物でした。 これを食べたテュポンは力を失い、ゼウスの猛攻撃からただ逃げ回るしかありませんでした。

そしてついに、テュポンはシチリア島のあたりで追い詰められます。 全能の神ゼウスは、テュポンが不死であることをもちろん知っていましたので、 巨大な山を持ち上げて、テュポンに叩きつけました。 テュポンは山の下敷きになり、ゼウスはテュポンを山の下に封印したのでした。

それが、現在のエトナ火山なんだそうで、 今でもと時々、山の下にいるテュポンが暴れるので、噴火が起きるんだそうです。

最大のピンチを乗り切ったゼウスは、逃げていたオリンポスの神々を呼び戻し、 再びオリンポスに君臨する神々の王に戻りました。 ガイアも、今度ばかりは大人しくなり、これ以降、ゼウスに歯向かいませんでした。

また、ゼウスを救ってくれたアイギパンという神様は、 その功績をたたえられて星座になりました。これが山羊座です。 古い占星術の絵などでは、山羊座は魚と山羊が混じった格好をしています。

これでようやく、世界の創造が終わり、世界は今の私たちが住む形になりました。





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