ゼウスの正妻となるヘラは、結婚と母性、家庭生活を司る女神です。 ゼウスが惚れ込んだ奥さんなんですが、 いつもゼウスの浮気に振り回されて、浮気相手やその子どもに いろんな困難を与えるので、ちょっとヒステリックで怖い奥さんのイメージですね。

Jacopo Amigoni
『Juno Receiving the Head of Argos』(部分)(1732年)
↑クジャクはヘラの聖鳥↑

そもそも、ヘラがゼウスと結婚することになるまでに、 ゼウスはお得意の変装まで使って、猛烈なアタックをしています。 ヘラは、美の女神アフロディテにも負けない美女でしたし、 なかなか落ちない(笑)女神でしたから、ゼウスはヘラに夢中になりました。

なかなか首を縦に振らないヘラを、どうしたら自分のものにできるか悩んだ ゼウスは、ヘラの大好きな鳥カッコウに化けて、ヘラのもとへ行くことを思いつきます。 おまけに黄金に輝く雨雲をまとって、ロマンチックな効果を演出して、ヘラに甘い言葉を囁きました。 いつものゼウスなら、相手の女性は参ってしまい、ここで想いを遂げるんですが、 ヘラは猛烈に拒絶します。

というのも、ヘラは結婚の女神です。 ゼウスには、前回紹介したように、二人も奥さんがいたのですから、 ヘラを“愛人”にしようなんて、絶対に無理なんですね。 ゼウスはヘラに、どうしたら自分の愛を受け入れてくれるか尋ねます。 ヘラは、“正妻”にしてくれるのなら考えましょう、と答えます。 ゼウスは今までの二人の奥さんと、正式に結婚したわけではありませんでした。 ですから、“正妻”はいないわけです。 ゼウスはヘラに夢中になっていましたから、喜んでヘラを正妻にしようと約束しました。 そこでようやく、ヘラの愛を勝ち取ったのでした。

ゼウスとヘラの結婚式は、ギリシア全土で盛大に祝われ、 ガイアからは黄金のりんごが生る木をプレゼントされます。 その木の下で、ゼウスとヘラは永遠の愛を誓ったのでした。

これが、結婚式の始まりだそうで、結婚式のおかげで、 妻としての立場や権利が保障されるようになったんだそうです。


ゼウスとヘラの間には、出産の女神エイレイテュイア、軍神アレス、青春の女神へべが生まれます。 エイレイテュイアは産婆のような女神で、神様のお産にも、人間のお産にも関わる神様ではありますが、 それほど大きな役割を持った神様ではありませんでした。 軍神アレスは美男子で、オリンポスの十二神にも数えられますが、 乱暴な性格で、同じ軍神のアテナともそりが悪く、アフロディテとの浮気が有名です。 へべは若く美しい女神でしたが、主な仕事はオリンポスの神々の給仕係。 と、皆いまいち力のある神様ではありません。


その上、ゼウスは男神でありながら、オリンポス12神の一人アテナを産んだので、 正妻として、女性として、ヘラは面白くありません。 で、ヘラも一人で子どもを産んでみます。 それが、アフロディテの夫となったヘパイストスです。 ヘパイストスは、醜い姿だったため、ヘラはヘパイストスを嫌って地上に捨ててしまいます。

さらに、ゼウスの浮気が始まります。 ヘラの嫉妬がひどくなる最初の原因となったのが、 ゼウスとレトというティタンの女神の浮気です。 このお話は、次回に・・・。


さて、女神から人間の美女まで、何度も浮気を繰り返すゼウスに対し、 ヘラは一度も浮気をしたことはありません。 一度、ゼウスに怒って、家を飛び出したことはありますが、ゼウスの策略で戻ってきます。 ゼウスも、何度も浮気をするのですが、最後は必ずヘラの元に帰ります。 さらに、ヘラに手を出そうとすれば、ゼウスの容赦ない罰が待っていました。

ヘラには一つ、どんな美女も敵わない大きな強みがありました。 それは、一年に一度春になると、カナトスという泉で沐浴し、 年齢も苛立ちも洗い流して、清らかな乙女に戻る!というもの。 こうなると、ゼウスは他の女性には目もくれず、 ヘラと出会った当時の愛情に燃えるのです。 そりゃ、誰も敵いませんね。。。


さて、この後のお話は、ヘラの嫉妬がキーポイントになって動いていくものが多いので、 ヘラは悪役にされがちなのですが、ヘラは結婚、特に女性の権利を守る女神さまです。 ですから、結婚している男(=ゼウス)と浮気する女は、許せないんです! その代わり、結婚した女性たちの強い味方ともなる女神です。 ヘラのイジワルの奥には、こんな事情があることを、頭の隅に置いておいてください。



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