ケルピーは、スコットランドの川や湖で目撃される、 美しい馬の姿をした妖精です。人間に対して悪意を恐ろしい水の精で、 ギラギラした目と絹のように美しい黒か灰色の毛並みをもつ馬の姿をしています。 姿を変えることが得意なので、ボロボロの服を着た老人になることもあれば、 ハンサムな青年の姿、四足の動物なら何にでもなれるという話もあります。 どんな姿のときにも、髪の毛や毛に水草をからませているので、水の精だとわかるそうです。

人間の姿をしている場合には、馬に乗っている人の後ろに飛び乗って脅かしたり、 若い女性には恋人のような姿で現れ、水の中に誘いこみます。 馬の姿でいるときも、湖畔で迷った若者や子どもに近づいて、背中に乗せたが最後、 水中の一番深いところに引きずり込んで、溺れさせ、すぐに食べてしまうとか・・・。 しかし、肝臓だけは食べずに、岸に残しておくんだそうです。 朝になると水面に内臓が浮かんでいるなんていう怖い話もあります。 また、川や湖の水かさを増して、ちょっとした洪水を起こし、 安全な場所を歩いていたはずの旅人を、水中に沈ませた話もありました。

『Boy on white horse』/Theodor Kittelsen(1909)
こんな恐ろしいケルピーですが、馬具をつけることができれば、 人間の思い通りに働かせることができるんだそうで、 ケルピーに馬具をつけることに成功した人の話も伝わっています。 これは、ケルピーとの知恵比べというか、化かしあいというか、 頭の回転の速い人でなければ、ケルピーを捕まえることはできません。 ケルピーが運んだといわれる岩や、 ケルピーに運ばせた石で建てた城というのも残っています。 ケルピーを捕まえて城を建てたある一家は、ケルピーに呪われて、一族が絶えるまで不幸がつきまとったそうです。


“ケルピー”以外にも、馬の姿をした妖精の伝説はヨーロッパ各地にあります。 アイルランドでは“オヒシュキ”(Aughisky)または“アッハ・イシュケ”(Each-Uisge)などと呼ばれる水馬がいます。 こちらは海水と湖にしか現れず、清流にも現れるケルピーとは少し違うようです。 髪に海草をつけた美少年や、ブーブリーという鳥の姿になることもあるそうです。
スコットランドの一部では“ナッグル”(Nuggle)やニューグル(Neugle)、シューピルティー(Shoopiltie)と呼ばれます。 ナッグルは尻尾に特徴があって、長い尾がグルグルと円を描いて背中に巻き上がっているんだそうです。 鞍と手綱をつけた格好で海岸を跳ね回り、人間をそそのかして背中に乗せると、海の中に引きずり込んでしまいます。 ただ、ケルピーたちほど悪意がないようで、乗り手がずぶ濡れになるだけで済む場合もあるようです。 シューピルティーはきれいな子馬の姿をしているそうです。
また、北欧では、Backahasten(ベカヘスト?)と呼ばれます。 Backahastenは、白い馬の姿がお気に入りで、霧の出ている日に現れます。


ケルピーは、夏がお気に入りのようで、夏の夕方、 岩の上に座ったり、岸に上がって草を食んだり、 泳いでいる姿を、羊飼いに目撃されています。 この、馬の姿の妖精の目撃談・・・・ 時代が下るにつれ、どんどん馬から変化して、 恐竜のような姿にイメージが変わっていきます。 そうです、湖で恐竜といえば、ネス湖のネッシー!  ネッシーも、本当はケルピーのような妖精なのかもしれませんね。





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