フランス・ブルターニュ地方にコリガンという妖精が伝わっています。
コリガンは、小人/妖精の一族とされますが、大きく分けて二つの説があるようです。
美しい女性の姿で、森の中の泉や池に現れ、人間の男性を誘惑する妖精と、
真っ黒で毛むくじゃらの悪魔のような小人で、ドルメンやメンヒルといった、
古代の巨石建造物を作ったといわれる妖精の二つです。
後者がコリガンの男だとか、女のコリガンも昼間は醜いという話もありました。
コリガン(Korrigan)とは、korrはドワーフのこと、ligは“小さい”という意味の接尾語、
anは“〜ちゃん”のような意味なので、“小さいドワーフちゃん”とでも言いましょうか。
およそ60cmぐらいだという話もありますが、人間と同じぐらいのサイズだろうと想像できる話も多いです。
何しろ人間の男性と床を共にするんですからね・・・。
美しい女のコリガンは、森の中の泉や池のそばで目撃される、湖の精の仲間です。
セイレーンや人魚のように歌を歌い、髪を梳かしているものもいて、
とにかく人間の男性を誘惑しようと待ち構えています。
白い衣をまとった金髪の美しい姿ですが、目は赤く輝いているそうです。
キリスト教の宣教師たちに反発したドルイド教の女性、
あるいは重要な地位にあったお姫様のような存在が、
追放され虐げられるうちにコリガンになった、と考えられています。
そのため、コリガンは教会や牧師さんを嫌っているようです。
中でも、教会の鐘の音は大嫌いで、鐘の音を耳にすると逃げていきます。
コリガンはその美しさで、人間の男性に恋をさせる力を持っています。
コリガンの住んでいる泉や井戸の水を飲んだ男性を特に狙うようで、
コリガンに息を吹きかけられる(ほどの距離にいる)と、死ぬことになります。
コリガンに恋をした男性は、コリガンがいなくなると、恋しさのあまり死んでしまうそうです。
逆にコリガンの誘いを断った男性には、死の呪いをかけるようで、
その呪いは教会へ逃げ込んでも効力を失わず、呪いをかけられた男性は死んでしまったそうです。
つまり、コリガンと出会ってしまった男性に、逃げ場はないのですね・・・。
また、聖母マリアを敵対視していて、聖母マリアのために聖別されている土曜日に、
コリガンが髪を梳かしているところを見てしまうと、男女関わらず死んでしまうと言われます。
そのほか、未来を予言したり、物の形を変えてしまったり、
光のような速さで移動することもできるそうです。
それから、人間の赤ちゃんを自分たちの醜い赤ちゃんと交換する
“取替え子”(Changling)もやるようです。
一方、毛むくじゃらのコリガンは、ホブゴブリンやブラウニーなどのように、
家事を手伝ってくれる小人でもあります。特に農家の守り神のような役割をもっていて、
夜中に農具を磨いてくれたり、いなくなった家畜を連れ戻してくれたりするそうです。
お返しに、テーブルの上にミルクやバターたっぷりのクレープや、
キャベツなどを置いておくと、翌朝には、部屋はピカピカ、朝食のスープもできている、
という高待遇をしてくれます。
しかし、コリガンをバカにしたり、イジワルをすると、
毎日馬小屋から、何頭もの馬がいなくなるわ、作物は掘り返されるわ、
果実は熟れる前に落とされるわ、と、散々な目に合うそうです。
こちらのコリガンは力持ちの小人と考えられていて、
ドルメンやメンヒルといった巨石建造物を作ったのはコリガンだ、
と考える人もいたようです。
美しい女のコリガンも、ドルメンの周りで踊っているという話もあります。
不思議な巨石と何か関係のありそうな妖精ですね。
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