ゼウスとヘラが結婚して、間もない頃のことです。
ゼウスは、早くも他の女神に手をだしていました・・・。
それが、レトというティタン神族の女神です。
レトは、黒衣の乙女と呼ばれ、神々のうちで最も柔和な女神でした。
ゼウスは、レトにウズラに化けて近づき、レトは双子を身ごもります。
さらに、「レトが産む双子は、最も輝かしい神となる」という予言がされ、
これを耳にしたヘラは、執拗にレトを苦しめることになります。
ヘラは、全世界に「今まで一度でも日の光に当たった場所を、
レトに出産の場所として使わせてはならない」と命じました。
そのため、レトは臨月の重いお腹を抱えて、
出産場所を捜し求め、世界中を歩き回ることになりました。
さらに、ピュトンという巨大な蛇が、レトを追いかけ回します。
ピュトンは、「レトが産む子どもに殺される」という予言がなされていたため、
レトを亡き者としようと、世界の果てまで追いかけました。
レトの様子を見ていたゼウスは、海の神ポセイドンに協力を求めます。
ポセイドンは、海に沈んでいた浮島を海上に持ち上げ、
さらに波で天井を作り、「今まで一度も陽にあたったことのない場所」を用意しました。
この島は、デロス島と呼ばれます。
デロス島に着いたレトは、ようやく身を落ち着ける場所を得ましたが、
ヘラが、自分の娘であり、出産の女神でもあるエイレイテュイアを、
レトの元へ行かせなかったため、レトはひどい難産に苦しみました。
レトの噂を聞きつけて、ゼウスの母レア、ゼウスの2番目の奥さんテミス、
ポセイドンの奥さんアンピトリテと、古い天空神ディオネがデロス島にやってきました。
レトが苦しんでいるのを見た4人の女神たちは、虹の女神イリスを呼んで、
エイレイテュイアを、こっそり迎えにやりました。
このとき、エイレイテュイアに賄賂がわたった、なんて話もあります。
ともかく、エイレイテュイアが来ると、レトは無事に
アポロンという息子と、アルテミスという娘を産みます。
このお話にも別説があって、先に生まれたアルテミスが、
生まれてすぐにレトの助産婦を務めて、アポロンが生まれたとも・・・。
Pierre Charles Jombert 『Niobe's children are killed by Apollo and Diana』(部分)(1772年)
↑母レトを侮辱され、お怒り中↑
アポロンとアルテミスは、予言どおり光り輝くほど美しい神になり、
アポロンは太陽と、予言、医学、音楽、弓矢などの神となりました。
一方、姉とも妹とも言われるアルテミスは、
月と、山野と狩り、弓矢の女神となりました。
この二人は、オリンポス十二神の中核となる神様です。
アポロンは生まれてたった3日で、レトを苦しめた大蛇ピュトンを
弓矢で射殺しました。
アポロンは、ピュトンを丁重に扱って、後のアポロンの神殿の下に埋めました。
そして、そこに神殿を建てて巫女をおき、
さまざまなお告げを人間に与えました。
ギリシア神話を読んでいると、神様の意見を聞きたい時に、
王さまや英雄が求める「デルポイの神託」は、この神殿で行われます。
アルテミスは、生涯独身を誓った狩りの名手です。
アルテミスを慕う森のニンフを引き連れて、山野を駆け巡るお転婆な女神でした。
生涯で二度恋をしましたが、どちらも悲しい結末に終わっています。
アポロンが金の矢を射るのに対し、アルテミスは銀の矢を使います。
二人とも、若く美しい姿で描かれる神様です。
さて、愛人に立派な神を産まれたことで、ヘラの嫉妬心は、大きく膨らむ一方でした。
ゼウスの愛人に向けられる嫉妬の嵐は、ここがスタートともいえます。
でも、ゼウスは立派な神さまを増やし、世界を確立させ、オリンポスの神々の安泰を得なければなりません!
オリンポス十二神のうち、ゼウス、ヘラ、ポセイドン、デメテル、ヘスティア、アテネ、アポロン、アルテミス、
そして、アフロディテと、ゼウスとヘラの息子アレスの10人が揃いました。
さらに、地上に放り出されたかわいそうなヘパイストスは、どうにかヘラと和解して
オリンポスの十二神に仲間入りし、アフロディテを妻に迎えます。
これで、11人ですね。
|