「ミロのヴィーナス」 ルーブル美術館
失われた腕に、黄金のリンゴを持っていたのではないか、という説がある。
アフロディテの登場する神話で、ギリシア神話の中でも重要なお話に、
『パリスの審判』と呼ばれるものがあります。
ある時、海の女神テティス(ネレイデスの一人)とプティアの王ペレウスの結婚式が行われ、
全ての神々が招待されました。
しかし、たった一人、招待されなかったのが、争いの女神エリスです。
このことに怒ったエリスは、こんな争いの種を結婚式場にまきました。
黄金のリンゴに、「最も美しい女神に与える」と、メッセージを付けて投げ入れたのです。
これを見て、三人の女神が取り合いを始めました。
美の女神アフロディテ、ゼウスの妻ヘラ、そして戦いと芸術の女神アテナです。
いずれも美しい女神であることは間違いなく、
その上みんな力のある神さまですから、
他の神さまたちも、誰が一番美しいかなど選べません。
(選ばなかった女神から何をされるか・・・笑)
そこでゼウスが仲裁に入り、ある羊飼いの少年が呼ばれました。
彼に選ばせようというのです。この少年、名前をパリス(アレクサンドロス)といって、
実はイリオス(トロイア)の王子なのですが、この時パリス自身は自分の出自を知りません。
パリスはイリオスの王プリアモスとヘカベの息子でしたが、
生まれた時に母親のヘカベが不思議な夢を見ました。
それは、自分が燃える火を産んで、その火が街へ広がり、イリオスが焼け落ちるというものでした。
これを夢占い師に相談すると「この子は災厄の種になる、殺した方が良い」という予言を受けたのです。
父親のプリアモス王は、即座に赤ん坊を殺すよう、家臣に命じました。
しかし、赤ん坊を殺すに忍びなかったプリアモスの家臣は、こっそりパリスを山に捨てました。
その子が羊飼いに拾われて育てられ、美男子に成長していたのです。
三人の女神たちは、パリスの前に並んで、誰が一番美しいかとたずねます。
そして、それぞれがパリスにこう申し出ました。
ヘラ:「私を選んだら、アシアの君主の座を与えよう。」
アテナ:「私を選んだら、戦いにおける勝利を約束しよう。」
アフロディテ:「私を選んだら、世界で最も美しい女を与えよう。」
買収ですね・・・。
パリスが選んだのは、世界一の美女を与えてくれるというアフロディテでした。
アフロディテは大喜びで黄金のリンゴを手にしたのでした。
問題なのは、この後のお話です。この世で最も美しい女(=人間の女)というのは、
スパルタの王女のヘレネという女性で、実は白鳥に化けたゼウスが
人間の女性と浮気をして生まれた子です。(しかも、卵から!)
ヘレネの美しさは有名で、たくさんの男たちが結婚したがりましたが、
ある条件のもとにメネラオスという人物と結婚し、すでにスパルタ王妃になっていました。
一方のパリスも、ニンフのオイノネという恋人がいましたが、彼女を捨ててヘレネを選びます。
アフロディテは、スパルタへ行ってヘレネをさらってくれば良いとパリスに告げ、
パリスは実行。ヘレネを連れ去ったのです。
このことがきっかけで、あの有名なトロイア戦争が起こるんですね。
ヘレネがメネラオスと結婚した時の条件というのは、こうです。
たくさんの求婚者たちを前に、誰を選んでも恨みをかうだろうと悩んだ
ヘレネの父のスパルタ王は、オデュッセウスに助言を求めました。
するとオデュッセウスは「誰を選ぶとしても、その男が困難に陥った際は、
その男の求めに応じて、全員が力を合わせて助ける」という誓いをさせたのです。
ヘレネがさらわれたことに怒ったメネラオスと兄のアガメムノンは、ヘレネ奪還のために
パリスの正体を突き止め、イリオスに戦争をしかけることになりました。
その際、オデュッセウスの誓いを持ち出して、求婚者たちに協力を求めます。
これが、アガメムノン率いるギリシア軍です。
そして、「トロイの木馬」作戦により、イリオスはギリシア軍の英雄たちに侵入され、
イリオスが滅びることになったのです。予言は当たってしまったんですね。
ヘレネはイリオス陥落後、メネラオスにスパルタへ連れ戻されました。(紆余曲折あるのですが。)
パリスはイリオスが滅びる前に、戦いで毒矢を受け、治すことのできる唯一のニンフ、
元恋人のオイノネのところへ行きますが、傷心のオイノネに拒否され、
イリオスに戻る途中で死んでしまいました。
オイノネは、パリスを拒否した後、後悔してパリスの後を追いますが、パリスの死を知って
パリスを焼く火に飛び込んだそうです・・・。
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