ピクシーは、イングランド南西部に伝わる妖精です。 コーンウォールではピスキー(piskeys)と呼ばれたり、pigsie(ピグシー?)、 pexie(ペクシー?)などの呼び方もあります。 名前を直接呼ばずに、「あの小さい人たち(the little people)」と言われたりもします。 ピクシーも、人間がつけた名前で呼ばれるのは嫌うようですね。

一般的なピクシー像は、とがった耳をした小さな人の姿です。 緑色の洋服を着ていて、赤い髪、緑色の三角帽子をかぶっていることもあります。 目がつり上がっているとも言われます。 普通は羽根のない妖精ですが、空中浮遊ぐらいならできるかもしれません。 近年では羽根のあるものをピクシーとしている場合もあり、 その場合は、透けるような羽根が背中についています。
Brian and Wendy Froud/Pixie

以上が一般的なイメージなのですが、 地域によって、結構容姿がことなります。 デボンという町に伝わるピクシーは、小さくて色白で、ほっそりしています。 特に洋服は身に着けていないようです。 コーンウォールのピクシーは、背の低い老人で、緑のボロを着ています。 サマーセットのピクシーは、赤毛で鼻が反り返っていて、目はやぶにらみ、 口は大きく、緑の服を着ています。

ピクシーは、イタズラが大好きで、人間のものを盗んだり、 人間に物を投げつけて、驚かせたり困らせたりすることがあります。 馬を盗むのも好きなようで、朝には厩にもどすのですが、 馬のたてがみを絡ませて、イタズラの証拠を残しておきます。 夜中、ピクシーに乗り回された馬はクタクタですから、次の日は使い物になりません。 ちなみに、女の子の髪を夜のうちに絡ませておくのも、 妖精の仕事です。これは「エルフ・ロック」と呼ばれます。

ピクシーの中には「ピクシー・ダスト」(Pixie dust)というものを 振り撒いているのがいます。 目的は、その「粉」を撒いたところに足跡をつける。 または、飛んだ後をつける。 つまり、ピクシーがいることをアピールしたいようです。 この「ピクシー・ダスト」、ディズニーの『ピーター・パン』にも登場します。 ティンカー・ベルの身体の周りに発生していると思われる「粉」がありますよね。 身体に「粉」をかけて、楽しいことを空想すると空を飛べる、というあの「粉」です。 でも、ティンカー・ベルはピクシーではなく、フェアリーと名乗っていますが。

さて、ピクシーの有名なイタズラをもう一つ。 何にもない荒野の中で、道に迷ったり、同じ場所をぐるぐる回ってしまうことがあります。 通いなれたところでも、初めて通る場所でも起こるそうですが、 そういう、おかしな迷子のことを、「ピクシー・レッド」(Pixie led)と呼びます。 つまり、ピクシーに迷わされているってことですね。 このピクシーのイタズラに対処する方法は、 @上着を裏返しに着る。 Aパンを持って歩く。 Bナナカマドの木でできた十字架を持ち歩く。 だそうです。

一方で、ピクシーも夜の間に家事を手伝ってくれる妖精でもあります。 コーンウォールの一部では、家の壁に空いた小さな穴をふさがずに、 そのままにしておいたそうです。もちろん、そこからピクシーが出入りできるように。

ピクシーは、洗礼を受ける前に死んでしまった子供だと考える人もいました。 また、蝶や蛾はピクシーの化身であるという話があります。Pigsieと呼ばれる蛾もいるようです。 これは世界に広くある、蝶や蛾を亡くなった人の魂の化身だと考えるものと似ています。 ケルトや、ギリシア神話でも蝶と魂は関係が深いものです。 こういった考えが混ざって、ピクシーと亡くなった子供がつながったのかもしれません。

また、キリスト教に抵抗したドルイド教の神様や信者が、 キリスト教の神様に追いやられて、どんどん小さくなったとも考えられています。 この二つは、キリスト教がピクシーや妖精を完全に否定したのではなく、 どう受け入れ、説明していったのかがわかりますね。 ピクシーはどんどん小さくなって、最後には 「ムリアン」と呼ばれるアリの姿になるんですって。






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