ロバート・カーク牧師の死
〜The Rev. Robert Kirk〜





ロバート・カーク牧師は、同じくアバーフォイルの牧師だった父親ジェイムス・カークの7番目の息子として生まれました。7番目の息子というのは重要なポイントで、優れた能力や、Second Sightを持っていると言われる存在です。ちなみに童話の「おやゆびこぞう」(ペロー版)も7番目の息子ですね。ただ、Second Sightなどの不思議な能力を授かるのは、7番目の息子の7番目の息子だという説も聞くので、ジェイムス・カークが7番目の息子だったのかどうかが、気になるところです。


1692年5月14日の朝のことでした。カーク牧師は、日課にしていた散歩に出かけ、地元ではかつて妖精が住んでいたと噂されるドゥーン・ヒルという丘へ向かいました。ドゥーン(doon)とは、おそらくゲール語の“dun”という「土塁」を表す言葉が語源となっているのでしょう。自然に出来た丘というよりも、人工的に作られたような丘なのだそうです。

散歩に出かけたカーク牧師は、そのまま二度と戻ってはきませんでした。一説では、ドゥーン・ヒルで倒れているのを発見されたそうです。カーク牧師はこの時50歳ぐらいですので、当時としては突然亡くなってもおかしくない年齢ではありますが、村の人々はただの病死や事故死とは考えなかったようです。

というのも、カーク牧師が亡くなる前年の1691年に、あの「妖精の知られざる国」が書かれているのです。この時は出版されてはおらず、実際に出版されるのは1815年、なんとカーク牧師が亡くなった123年後です。しかし、当時すでに「妖精の知られざる国」の存在は、村人には知られていたのでしょう。または、カーク牧師と妖精の関りについて知っている人がいたのかもしれません。妖精についての詳細な記録が残されたことに腹を立てた妖精たちが、カーク牧師を連れて行ったのだと考える人が少なくなかったようです。


このサイトでは、まだきちんと取り上げていませんでしたが、妖精たちが恐れられた一番深刻な原因に「チェンジリング」というものがあります。主に生まれたばかりの子供や、若く美しい女性や母乳の出るの女性などが、妖精に連れ去られるというものです。かわりにニセモノの赤ちゃん(正体は年老いた妖精だったりする)を置いていったり、木の棒や石などが置かれていたり、そっくりなのに魂が入っていない身代わりになっていることもあります。


カーク牧師の遺体は、このチェンジリング(連れ去られた人の身代わりに残された物も、チェンジリングと呼びます)だったのだと考えられたのです。妖精が住むと噂される丘で、不思議な能力を携えている可能性のある7番目の息子であり、妖精の秘密を暴くような論文を残している人物が突然亡くなったら、そう考えても不思議はありませんね。

本物のカーク牧師は妖精の国へ連れ去られ、瓜二つのニセモノだけが残されていたのだと、まことしやかにささやかれたのでしょう。さらに、カーク牧師の伝説には、まだ続きがあるのです。






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