ロバート・カーク牧師の幻影
〜The Rev. Robert Kirk〜





ロバート・カーク牧師の伝説で、特に際立っているのが死後の伝説です。この伝説とともに「妖精の知られざる国」を広く紹介したのは、スコットランドの詩人で作家のウォルター・スコットです。カーク牧師の後継者となったグレアム牧師が“Sketches of Picturesque Scenery”(直訳すると「絵のような風景のスケッチ集」)の中に、この伝説を書き残しているのだそうです。


それによると、カーク牧師は近くの妖精の丘を散歩している時に卒倒してしまい、それが死んでいるのだと誤解されてしまったというのです。スコットの言葉を借りれば「仮そめの葬儀」の後、カーク牧師の幻影が親戚の前に現れたのだそうです。そこでカークの幻影が言うには、いとこのダッチレイ(Duchray:アバーフォイルにある地名)のグレアムのところに行って自分のことを伝えてほしい。自分は死んではおらず、妖精の国に囚われているのだ。私が解放されるには、たった一度だけチャンスがある。私の妻のお腹には子供がいて、その赤ん坊の洗礼式に、私は洗礼の行われている部屋に現れるだろう。その時、いとこのグレアムが私の頭に向かって短剣を投げてくれれば、私は解放される。この機会を逃せば、私は永遠に囚われたままだろう。


そして、その洗礼式の時、予告どおりカーク牧師の幻影が現れたというのです。いとこのグレアムは、驚きと恐怖で、探検を持ったまま身動きがとれず、その間にカーク牧師の幻影は部屋を横切っていったといいます。


残念なことに、カーク牧師を現世に取り戻す機会は永遠に失われてしまったようです。この時カーク牧師を取り戻せていたら、いったいどんなことになったでしょう? 妖精の国がどんなものか、さらに詳しい論文が書かれていたでしょうか? それとも、妖精の国から戻ってきたとされる人の多くがそうであるように、重く口を閉ざすか、正気を失ってしまっていたか・・・。


今も、カーク牧師は妖精の国に囚われたままだと言われます。アバーフォイルにあるドゥーン・ヒルの上には、森の中にぽつんと広場が現れ、真ん中に一本の古い松の木が立っているそうです。この松の木は「牧師の松」と呼ばれ、この木にカーク牧師の魂が閉じ込められていると言われています。人間界と妖精界の間にいると考えられているカーク牧師に、妖精へのメッセージ(主に願い事)を伝えてもらおうと、広場を囲む木々に色とりどりの紙や布に書かれたメッセージがかけられているのだそうです。

このドゥーン・ヒルを望む、かつてのカーク牧師の教会は今は廃墟となっており、ドゥーン・ヒルに向かってカーク牧師のお墓(記念碑)が建っています。ただし、お墓には何も入っていないとか、石が入っているとか言われています。お墓自体もカーク牧師が亡くなって100年ほど経ってから建てられたという話もあって、ロバート・カーク牧師の「死」自体にも謎が残ります。





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