ヴァイナハトマン

ドイツ北部のサンタクロースの仲間ですが、ヴァイナハトマンとは「白夜の男」という意味で、 もともとは怖い「冬おじさん」だった精霊が、宗教改革後に、再び脚光を浴び復活したタイプのクリスマスの妖精です。

別名をペルツニッケル(毛皮を着たニック)、シンメル・ライター(白馬の騎士)などとも言われます。 「白馬の騎士」とは、オーディンの別称の一つでもあり、さすがドイツ北部のクリスマスの精といったところでしょうか。 ペルツニッケルは、長くて赤い毛皮のコートを着て、ブーツをはき、大きな帽子をかぶっているという姿で、 リンゴやナッツがいっぱいの袋とツリーを背負っているという、現代のサンタクロースの姿にかなり影響を与えたと思われる存在です。 これらドイツの冬の精と聖ニコラスのイメージが混ざって、ヴァイナハトマンができあがっていきました。

本来は聖ニコラスの日(12月6日)の前夜、空を飛んで一軒一軒の家をまわり、良い子にプレゼントを配りました。 18世紀頃には、クリスマスイブの夜にプレゼントを配る、ちょっと無愛想なサンタになっていたようです。 現代では、私たちにもお馴染みの姿のアメリカ製サンタクロースのことを、ヴァイナハトマンと呼んでおり、 他の呼び方のクリスマスの精霊や、次に紹介するクリストキントも席巻しているようです。

クリストキント

ルターの宗教改革で、聖人崇拝が禁止されたドイツのプロテスタントで、聖ニコラスの立場を継いだ形なのが、 クリストキント(Christkind)です。 Christ=キリスト、Kind=子供という名前からもわかるとおり、 幼子キリストがじきじきに子供たちにプレゼントを配る・・・という設定でスタートしたはずなのですが、 やはり、キリストがプレゼントを配るなんて、恐れ多いことは少しずつ形を変え、 今では白い衣装に身を包んだ大人の天使(若い女の子がクリストキントの扮装をします)が プレゼントをくれる姿になりました。

クリストキントは、真っ白な衣装と白い羽根をつけ、金色の紙で作った王冠にロウソクを飾った姿です。 銀の鈴とお菓子の入ったバスケットを持っていて、たいてい金髪で色白の女の子がクリストキントの役をします。 クリストキントにも“ハンス・トラップ”という名の熊の皮を被った怖い精霊など、 お仕置き役の精霊が付き従っている地域もあります。 また、クリストキントとヴァイナハトマンが一緒にやってくる地域もあります。

ドイツ南部やオーストリアなど、かなり広い地域でクリストキントがプレゼントをくれるという風習があります。 クリストキントは姿を見られることを嫌がるので、クリスマスイブの夜まで子供たちはツリーのある部屋に 入ってはいけないことになっているそうです。 そして、クリストキントが去るときのかすかな鈴の音を合図に、子供たちはドアを開けて部屋に飛び込み、 ツリーの下に置かれているプレゼントをもらうんだとか。


クランプス

12月6日の前夜、特にオーストリアのアルプス地方では、 日本のなまはげそっくりか、もっと怖い鬼が出てきて、街をねり歩きます。 彼らをオーストリアでは、クランプスと呼びます。

クランプスの外見は、赤い木のお面をかぶり角が生えていて、 黒い羊の毛皮をまとっているもの、茶色のお面に茶か白の羊の革をまとったもの、 などなど、とにかく西洋の悪魔がなまはげの格好をしたような姿です。 手には、細い枝を箒のように束ねて持っていて、 それを、ムチにして、子どもも大人も構わず叩いてまわります。 もともとは行儀の悪い子供を探してお仕置きしていたのですが、現代では悪ふざけ解禁の日状態のようです。

百聞は、一見にしかず。(クランプス参考サイト:Krampus)  怖すぎるので、自分のページに画像を貼りたくないのが本音(笑)。

クランプスは、12月の最初の2週間ほどは、昼間でも街中に現れて、 学校に入り込んだり、街中のお店に乱入したりして、とにかく人々を、ムチで叩いてまわるそうです。 クランプスの会うと、泣いてしまう子もいるらしいんですが、 大人には加減せずに叩くから、会わないようにしている大人もいるようです。

クランプスも聖ニコラスの従者で、このクランプスたちの行列の最後に 聖ニコラスがいて、良い子にはお菓子をあげるそうです。 悪い子にも「良い子になるように、約束してね。」と言って、お菓子をくれるそうですが、 悪い子がそのまま良い子にならないと、 クランプスが大きな袋に子どもたちを入れて、どこかへ連れて行っちゃうそうです。 ヒドイ時には、そのまま川の中に捨ててしまうと言われます。 子どもたちは、聖ニコラスが大好きで、お菓子をもらいたくって、 がんばってクランプスの行列を見に来るようです。

クランプスも、元々は北欧神話やゲルマン神話の神様たちだったと言われる存在です。 インキュバスの仲間だ、という説もあります。

クネヒト・ルプレヒト

南ドイツでサンタの役割をしている、“もと”お仕置き担当の精霊がクネヒト・ルプレヒトです。 おそらくクランプスの仲間の一人だったのでしょう。 皮や藁を被り、黒い顔をした恐ろしい姿なのですが、聖ニコラスの従者から独立して、一人でプレゼントを配るようになりました。 とはいえ、クネヒト・ルプレヒトからプレゼントをもらうには、テストがあります。

お祈りの言葉を完璧に唱えることができれば、子供たちはクネヒト・ルプレヒトからご褒美に、 りんごやナッツや、ジンジャーブレッドをもらえます。しかし、唱えられないと、罰が待っているのです。

クネヒト・ルプレヒトは中世のドイツに現れた伝統のようですが、もともとはオーディンやトールの影響があるようです。





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