ロシアなどの東ヨーロッパにヴォジャノーイ(водяной)という妖精がいます。 ヴォダー(=水)という言葉に由来する名前の通り、池や湖、河川に住む危険な妖精です。

ヴォジャノーイは、基本的に男の妖精ですが、色々な姿が伝えられています。 裸の老人の姿で、緑色の髪や髭を生やし、ヘドロやウロコで覆われているというものや、 顔は人間ですが、並外れて長い足の指をもち、手に代わりに動物の足がはえ、 長い角と尻尾、燃える炭火のような目をしているもの。 巨大な赤い目と、長靴のような形の大きな鼻をした、全身真っ黒の姿のものもいます。 時には巨大な魚や、水面に浮かぶ木の幹に変身していることもあります。 人間の姿をしている時は、月の満ち欠けに合わせて、若返ったり年取ったりするようです。 老人の姿の場合は、髭の色が様々に変わり、月が欠けている晩には白くなるとも言われます。 その他に、髭を生やしたカエルのような姿だとか、 巨人だとか、エビに似ているとか、半魚人だとか、 赤いシャツを着て髭を生やした農民の姿だとか、色んな姿で描かれています。

ヴォジャノーイは渦巻きに住んでいるという話もありますが、 深い水の底にある、美しい宮殿に住んでいるとも言われます。 ヴォジャノーイの宮殿は、沈没船や、沈没船が積んでいた金銀、宝物や、 水晶などでできており、太陽よりも強い光で輝いているそうです。

ヴォジャノーイは人間に対して悪意を持っており、 ヴォジャノーイたちの住処である、水の中を我が物顔に泳いでいる人間を見ると、溺れさせたりします。 ヴォジャノーイを侮辱したり、怒らせた人は当然、気まぐれにその辺の人を襲ったりします。 泳いでいる人を捕まえて、自分の住処の水底に引き込んで、食べてしまうとも、 食べずに奴隷にするとも言われています。


水車など、粉をひく施設のそばに集まるのが好きだという話もあって、 粉屋さんと漁師さんは、ヴォジャノーイに襲われないといわれました。 それどころか、彼らの守り神であると考えられています。 漁師さんは、漁をするときにヴォジャノーイに祈り、最初の獲物をヴォジャノーイに捧げました。 粉屋さんは、ちょっと怖い・・・。 普段は、ヴォジャノーイが人間に危害を加えないように、 雄鶏を生贄に捧げ、ヴォジャノーイのご機嫌を取っていましたが、 時々、夜に酔っぱらって歩いている人や通りがかった見知らぬ旅人を、水の中に突き落として 捧げ物にしていた、という迷信とも事実ともつかない言い伝えがあります。

昼の間は、水底の宮殿でおとなしくしているヴォジャノーイは、 日が暮れると水面に上がってきて、水浴をするおろかな人間がいないかと待ち構えています。 暗くなってからの水の事故は、ヴォジャノーイによるものだと考えられていたのですね。





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