ベン・ニーア(Bean Nighe)という、バンシーとよく似た妖精がいます。
バンシーがアイルランドで語り継がれているのに対し、 ベン・ニーアは主にスコットランドに伝わっています。
ベン・ニーアも死の予兆を告げる妖精ですが、 バンシーと違って、特定の家につくのではなく、
人気のない小川の浅瀬で、洗濯をしています。
何を洗っているかというと・・・ 死の近い人の死装束や甲冑から、
血を洗い流しているんです。
ベン・ニーアという名前は、“Bean=女”、“Nighe=洗う人”からできていて、
「浅瀬の洗濯女」という呼び方もされる妖精です。
ベン・ニーアもやはり、出産後すぐに亡くなった女性といわれ、
本来彼女がまっとうするはずだった人生の長さだけ、
この仕事を続ける運命なのだ、という説があります。
何だか、悲しいですね。
ベン・ニーアの外見は、鬼婆のようだったり、 若い女性だったり、いろいろですが、
足の指に水かきがある、という話が多く見かけられました。
あるベン・ニーアのお話には、鼻の穴が一つしかなく、
一本の大きな前歯が出っ張っていて、長く垂れ下がった胸をした、
緑色の服を着た姿で登場します。 足の指に水かきがあるともいわれます。
死の近い人の服を洗っている妖精は、
イギリスのほかの地域や、フランスのブルターニュ地方にもいて、
Midnight Washerwomen、
Les Lavandieres()(洗濯女)、
Cannard noz()(夜の鴨)
など、色んな呼び方をされています。
ブルターニュのカナール・ノは、3人の老婆で、
背が低く、昔風の緑色の服を着ていて、足の指に水かきがあります。
この足の形から、“カナール・ノ=夜の鴨”という呼び方ができたようです。
カナール・ノは人間に悪意を持っていて、
チャンスがあれば人間を殺そうとさえ思っているようです。
真夜中に彼女たちが洗濯物を洗う音が聞こえる日は、
決して外に出てはいけません・・・。
カナール・ノを見てしまうだけでも縁起が悪いのですが、
彼女たちに見られるほうが、もっと悪いそうで、
カナール・ノは見つけた人間に手伝いをさせ、
洗濯物をしぼるときに、人間まで一緒に絞め殺してしまったり・・・。
ただし、こういうお話には必ず助かる方法があって、
洗濯物をしぼるとき、
@カナール・ノがしぼる方向と反対にしぼる。 A同じ方向にしぼる
の、どちらかをすると、命が助かる上に、願い事を聞いてくれるらしいです。
残念なことに、上記両方の説があったので、 どっちが正解なのか、わかりません。。。(そこが大事なのに。)
また、ベン・ニーアが洗濯をしているところに忍び寄って、
垂れ下がった胸に吸い付く勇気のある人は、
ベン・ニーアの養子になれるそうです。
すると、命を永らえることができる上に、願い事を叶えてもらえるんですって。
とはいえ、夜中に川のそばで、洗濯をする音が聞こえる夜には、
出歩かないことをお勧めします。
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