クリスマスの歴史

12月24日はクリスマス・イブ。25日はクリスマスで、イエス・キリストの誕生日です。
というのが、日本人の一般的な常識ですが、実はクリスマスにはたくさんの謎があるのをご存知でしょうか?  まずイエスの誕生日について、聖書には一言も語られておらず、12月25日がイエスの誕生した日であるというのは、後世様々な事情から作られたものなのです。 では、クリスマスとはいったい何なのか? イエスの誕生日はいつなのか? といった謎と一緒に、クリスマスの歴史についてご紹介したいと思います。


イエスはいつ生まれたか?

クリスマスを語る上で、イエスの誕生について語らないわけにはいきません。 ですが、冒頭で書いたとおり、聖書には「イエスがいつ生まれたのか」ということに関して、一切記述がありません。 有名なイエスの誕生シーンには、それが何月何日だったのかは書かれていませんし、のちに弟子たちがイエスの誕生日を祝ったというエピソードも出てきませんから、イエスの誕生日がいつであるのかは、誰にもわからないのです。 なぜイエスの誕生日を記録に残さなかったかというと、初期のキリスト教ではイエスの死と復活が重要な信仰の対象で、誕生についてはたいした興味を持っていなかったからでしょう。イエスの誕生日がいつであるか、キリスト教徒たちが考えるようになったのは、もう少し経ってからのことでした。

そもそも、イエスが生まれた年についても、はっきりしたことはわかっていません。 西暦元年に生まれたというのも、ローマの修道士で神学者のディオニュシウス・エクシグウスが計算したものに基づいているのですが、何とこれが、間違っているようなのです・・・。 “西暦”というのがイエスの生まれた年から数える、いわばキリスト紀元だということはご存知だと思いますが、この年代基準ができる前、ローマでは“ローマ建設紀元”と呼ばれる、ローマ都市が建ってから何年か、という数え方を使っていました。

エクシグウスは『ルカによる福音書』に第2ローマ皇帝ティベリウスの治世15年にイエスが30歳であったという記述から、ローマ建設紀元754年にイエスが生まれたことになると計算し、キリスト紀元元年を導き出したのです。ところが同じくルカ伝には、イエスがヘロデ王の治世に生まれているはずの出来事が記述されています。新しいユダヤの王が生まれたことを知ったヘロデ王が、2歳以下の男の子を虐殺したという有名な出来事です。このヘロデ王はローマ建設紀元750年に没しているため、エクシグウスの計算が正しければ、イエスが生まれる4年前にヘロデ王が亡くなっていることになり、つじつまが合いません。
現在のキリスト紀元はエクシグウスの計算ミスに基づいていると、カトリック教会の学者も認めているぐらいですので、イエスは紀元元年に生まれていないだろうというのは定説と言ってもいいかもしれません。

次に、日にちについてです。 初期キリスト教で、イエスの誕生日とされた日は、何通りかの説が伝わっています。
まずは1月6日説です。これは、正確には誕生日ではなく、イエスが洗礼を受けた日とされていますが、 2世紀中期頃から4世紀に活躍したキリスト教の分派が主張したものです。 この日は現代でも、公現祭(エピファニー)の日であり、東方から来た占星術の学者たちがイエスの元を訪れた日として祝っており、この日までがクリスマス期間です。 また、3世紀頃の書物には3月28日という説が出ていますし、その他、2月2日3月25日4月2日4月19日5月20日11月8日11月17日などなど・・・諸説あります。 最近の研究では紀元前3年9月11日とするアメリカカトリック大学名誉教授ジョゼフ・A.フィッツマイヤー氏の説をはじめ、9月説が多くみられます。

イエスは生まれてすぐに「飼い葉桶に寝かされた」と聖書の記述にあることから、イエスは厩で生まれたとされますが、2世紀の神学者ユスティノスは、「イエスは洞窟で生まれた」と書いているそうです。なんでも当時のユダヤの農家では、家畜を洞窟の中で休ませていたそうなので、飼い葉桶があるからといって、建物の中とは限らないようです。このいきさつを考えると、真冬のベツレヘムで、そんな場所で出産させるだろうかと疑問が湧いてきます。また羊飼いが野宿をし、夜通し羊の番をしていたという記述からも、イエスが生まれたのは真冬ではないんじゃないかと考えたくなります。しかし、エルサレム周辺では真冬も羊の放牧が行われているのだそうで、羊飼いの話から冬生まれを否定することはできません。

もちろん、12月25日も有力な説の一つではあります。 なぜ12月25日に決まったのかを含めて、次の回でクリスマスの成立までをお話しましょう。





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