16世紀から17世紀のイギリスで、もっともよく語られた妖精に、 ロビン・グッドフェロー(Robin Goodfellow)というイタズラ者がいます。 ホブゴブリンの一種というか、ほとんど妖精のイメージの塊のような、正統派イタズラ大好き妖精です。

「ロビン」というのは、よくある男性の名前で、日本でいう「太郎」のような感じ。 「グッドフェロー」というのは、「気の良いやつ」というような意味で、 妖精を「気の良い人たち」とか「平和好きの人たち」と呼んだこと(フェアリーご参照) と似たような意味でつけられたと思われます。

今まで取り上げた妖精たちとちょっと違っているのは、 ロビン・グッドフェローが妖精の個人名だという点です。 この妖精が、昔から「ロビン・グッドフェロー」という名前で、 人々の間で語られていたものなのか、1628年(別説あり)に出版された 『ロビン・グッドフェロー、その悪ふざけと陽気ないたずら』という短い作品の、 無名の作者が作り出したキャラクターなのかは、今ではわからなくなってしまっているそうですが、 ロビンの性格はこの作品で詳しく描かれています。

ロビンは、位の高い男のフェアリー(のちに妖精の王オベロンだとわかる)と、美しい人間の田舎娘の間に生まれ、 人間の子供として母親に育てられました。ロビンが赤ちゃんの時には、たくさんの妖精たちが、おいしい食べ物や、 上等の贈り物を届けてくれたそうです。ロビンが6歳になると、その腕白ぶりとひどいイタズラに手を焼いた母親が、 思わず「鞭で打つわよ!」とロビンを脅かします。これを聞いたロビンは家出をして、仕立て屋の小僧さんになりますが、 ここも逃げ出すことになりました。

疲れ切ったロビンが道端で眠りこんでいると、夢の中に妖精たちが出てきます。 そして、目覚めたロビンの傍らには、金の巻物が一つ置かれていました。 ロビンが巻物を開いてみると、そこには詩が書かれており、ロビンがオベロンの息子であるということが書かれていました。 さらに、ロビンがほしいと思うものは何でも手に入ること、 馬、ブタ、犬、猿などに変身できること、ただし悪い人間にしかイタズラをしてはいけないこと、 正直で良い人間が困っている時は、助けなければならないことが書いてありました。 さらに、ロビンがこの能力を上手く使うことができれば、妖精の国へ連れて行こうと書かれていました。

さっそくロビンは、ここに書かれていることが本当かどうか試してみました。 すると、どうやら本当に巻物に書かれた能力を手に入れたようでした。 では早速イタズラを・・・もとい、仕事を始めなければなりません。

ロビンの最初の“仕事”の相手は、行いの悪い田舎男でした。 ロビンが馬に姿を変えて男に近づくと、男は喜んで背中に乗ってきました。 ロビンは暴れて、男を背中から振り落としたので、男は首の骨を折りそうになりましたが、 そんなことにもめげずに、またロビンの背中に乗ってきます。 そこでロビンは、男を乗せたまま大きな水たまりに入り、パッと姿を消してしまいました。 男は突然空中に跨っている状態になり、驚いている間もなく、ドブンと水の中に落っこちました。 ロビンは「ホー、ホー、ホー!」っと笑いながら逃げていきました。

と、こんな具合にロビンのイタズラは始まって、恋人たちを幸せに導いたり、 働き者のきれいな女中さんの仕事を夜の間に片づけておいたり、 若者の一団をヒースの荒野で一晩中迷わせたり、 若い娘に乱暴しようとしていた男を厚い茂みに投げ込んだりと、大活躍します。

そしてある晩、妖精の王オベロンがロビンを迎えに来て、妖精の国へ連れて行き、 ロビンは人間界に明かされたことのない秘密を知ることになったのだそうです。






Copyright©2007 Orie_☆. All Right Reserved.
Since 2007/07/07
inserted by FC2 system