オーディンと冬おじさん
現代のサンタクロースの姿には、別の、しかも聖ニコラスより古いモデルがいます。
それは、北欧神話のオーディンとトールです。
オーディンは北欧神話の主神で、八本足の馬スレイプニルの引く馬車に乗って冬の空を駆け回り、
病気を治したり、未来を予言したり、人々を裁きにやってくるといわれています。
オーディンは白い髭を生やし、つばの広い帽子をかぶった老人の姿です。
トールも北欧神話の雷と豊穣を司る、赤毛で赤髭の逞しい神様です。
トールはタングリスニとタングニョーストという名の二頭のヤギがひく戦車に乗って、春を告げる神様でもあります。
この北欧神話の神々をモデルに、バイキングやドイツ北部に厳しい冬を擬人化した精霊が現れます。
それが、「冬おじさん」とか「クリスマスおじさん」と呼ばれる存在です。
冬の精霊の格好をさせた村人をみんなでもてなして、冬が厳しくないように、
次の年には豊かな実りがあるようにと祈るものでした。
ですから、冬おじさんもクリスマスおじさんも、プレゼントを配るのではなく、
ご馳走をもらうほうなのですね。きちんともてなさないと、怖い存在だったのです。
こういった北欧のイメージと、子供や結婚前の女性の守護聖人である聖ニコラスのイメージが出あって、
現代のサンタクロースに近いイメージができあがっていくのですが、
絶大な人気を誇った聖ニコラスも、決して安泰だったわけではありません。
聖ニコラスにも、危機があったのです・・・・。
宗教改革
世界史でお馴染みの16世紀マルティン・ルターによる宗教改革が、クリスマスとサンタクロースに大きな影響を与えています。
宗教改革の一つに、当時いきすぎだと考えられるほどだった聖人崇拝や、異教の祭から引き継いだ習慣を
否定する動きがありました。このとき、聖ニコラスの祝日12月6日(この日に子供たちはプレゼントをもらえたのですが)は、
祝っても祝わなくてもかまわない祝日に格下げされてしまいます。また、お祭り騒ぎやプレゼント交換は、
サトゥルナリアやユールといった異教の祭から引き継いだものとして、禁止されてしまうのです。
それでも、民衆に広く親しまれていた習慣を、完全になくすことはできませんでした。
プレゼントを渡す習慣は、12月6日やその他クリスマスに近い聖人の祝日にもあったため、
12月25日だけにまとめることで妥協されましたし、プレゼントをくれる存在も、聖ニコラスではなく、
聖人とは関係のない冬の精や、妖精に受け継がれた地域もあります。
こうしてヨーロッパには、聖ニコラスのサンタクロースだけでなく、様々なタイプのプレゼントをくれる存在が出来上がっていきます。
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