シンター・クラースとスワルト・ピート
聖ニコラスのオランダ語の「シンター・クラース」ですが、オランダでは宗教改革の波から聖ニコラスは守られた形になります。
シンター・クラースが子供たちにプレゼントを配るのは、12月6日(聖ニコラスの日)です。
シンター・クラースは司教の格好をしていて、慈愛に満ちた優しいおじいさんです。
何と、スペインに夏の別荘を持っていて、そこに従者のスワルト・ピート(黒いピーター)という黒人の精霊と一緒に暮しています。
11月になると船におもちゃを積み込んで、アムステルダム湾に到着し、そこから白い馬に乗ってオランダ中の子供たちのところをまわります。
スワルト・ピートというのは、オランダがスペインの植民地だったころに生まれた精霊ですが、
スペインは一時期ムーア人による支配を受けていたことがあり、スワルト・ピートは16世期頃の東洋の衣装を着たムーア人の少年の姿をしています。
シンター・クラースが良い子にプレゼントを配るのに対し、スワルト・ピ−トは悪い子にお仕置きをする怖い存在です。
スワルト・ピートは行儀の悪い子供の名前を全て記録しておき、クリスマスに罰を与えるか、
もっと悪いと子供を袋に詰めてスペインに連れ去ってしまうといわれています。
シンター・クラースが白い馬に乗っているのは、北欧のオーディンの影響があると考えられますが、
ある地域では、子供たちはこの白い馬のために、靴の中に干草やニンジンを入れて置いておくのだそうです。
ファーザー・クリスマス
現代のイギリスでは、サンタクロースのことを「ファーザー・クリスマス」と呼んでいますが、
実はファーザー・クリスマスは、17世紀頃まで、ケルトの文化を引き継いだ、
太陽の復活と春の訪れを祝う、喜びや希望を擬人化した妖精でした。
イギリスには聖ニコラスブームが届かなかったようで、その代わりにユールスタイルのお祭が残っていたようです。
オーディンの白髪と白くて長い髭を受け継ぎ、ロバやヤギに乗って、
ユールを祝って酒盛りをしている人たちに贈り物を届けてまわる存在でした。
14世紀頃からは、ファーザー・クリスマスがクリスマスの12日間の仮装劇を主催するようになりました。
ファーザー・クリスマスは聖ニコラスとは違って、恰幅のいいタイプで、
赤ではなく緑のローブを着る、イギリスの妖精らしいスタイルでした。
しかし、17世紀の清教徒革命で、このファーザー・クリスマスのスタイルは姿を消してしまいました。
現代のイギリスでは、アメリカスタイルのサンタクロースを「ファーザー・クリスマス」と呼んでいます。
ペール・ノエルとペール・フエッタール
ペール・ノエルは、フランス版の「クリスマスおじさん」です。
聖ニコラスの代わりにプレゼントを配る役目になりました。
ペール・ノエルは、オランダのシンター・クラースのように、従者を連れていて、
こちらはペール・フエッタール「鞭おじさん」という、名前からだいたい想像がつきますが、
悪い子を見つけると鞭打つ(打とうとするだけのことも)妖精です。
子供たちはクリスマスの間、ペール・フエッタールに鞭打たれないよう、特に良い子でいるそうです。
ペール・ノエルは、赤い服を着て白い馬に乗っていることもあります。ここでもオーディンから受け継いだ要素が見られます。
また、スイスではルーシーという奥さんを連れていることもあるそうです。
このルーシーは、ペール・ノエルが男の子にプレゼントを配るのに対し、女の子にプレゼントを配るそうです。
また、鞭おじさんではなく、ヤギや悪魔の仮面をかぶったお化けが、鞭を振り回して、ペール・ノエルに着いていく地域もあります。
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